SUPER GT 第1戦 岡山 レポート&フォトギャラリー

SUPER GT 第1戦 岡山 レポート&フォトギャラリー

23年開幕戦、悪天候のレースを制したのは MOTUL AUTECH Z!

<GT500>
4月15、16日、岡山国際サーキットにおいて、23年シーズン開幕戦となるSUPER GT第1戦が行なわれた。連日、雨の影響を受けて、予選、決勝ともに難しいコンディションとなったが、その中でポールポジションからスタートを切った#23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)が巧みな戦略を味方に優勝を果たしている。

予選前日の搬入日は汗ばむほどの陽気に恵まれた岡山国際サーキットだったが、予選日は朝から雨模様。午前中に行なわれた公式練習も、気温13度、路面温度14度と季節外れのコンディションでスタートする。開始から30分ほどで赤旗中断になったセッションは、再開後もコースに留まるのが精一杯の状態。結果、午前10時34分には天候悪化のために再度赤旗が提示され、このまま終了となった。

ノックアウト予選は午後2時にスタート。まずGT300クラスから出走となったが、雨量が急激に増えて赤旗中断を招いた。また、通常10分間で実施される各セッションは、天候や路面コンディションを考慮して15分間に変更されている。GT500クラスのQ1は午後2時53分にスタート。雨量が減ったことを受け、浅溝のウェットタイヤを選択する車両いた中で、トップタイムをマークしたのは23号車のクインタレッリ。23号車がベストタイムを更新する直前、#100 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)の牧野がチェッカーラップで1分29秒812をマークしてトップに躍り出たが、クインタレッリは1分29秒659で逆転。ミシュランタイヤのポテンシャルをしかとアピールした。その一方で、昨年のディフェンディングチャンピオンである# 1 MARELLI IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)はまさかのQ1落ち。雨量と装着したタイヤ、路面コンディションの組み合わせによって、明暗分かれる結果になった。

続くQ2。予選中、路気温はほぼ同じ状態で異なるのは雨量のみ。Q1よりもかなり雨が減り、Q1と違うタイプのウェットタイヤを選択するチームも見受けられた。ここでも23号車、さらに同じミシュランタイヤを装着する#3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)が早々から上位につける。タイヤに熱が入ると周回ごとにタイムアップする車両が増えたが、中でも23号車は松田が1分27秒860までタイムアップ。2番手で続いた3号車に対して最終的に1秒175という大差をつけてポールポジションを獲得した。23号車はクインタレッリがQ2を担当することが多く、松田自身のアタックによってポールポジションを手にしたのは2010年、第4戦マレーシア・セパン戦以来。13年ぶりに自らの手で掴んだ2回目のポールポジションから、決勝では昨年果たせなかった優勝を目指してスタートを切ることになった。

翌日は青空の朝を迎えたサーキット。午前中は日差しも出て、観戦日和のまま決勝前のスタート進行に向かう。ところが上空にはどんよりとした灰色の雲が広がり、冷たい風が吹くように。午後1時30分、地元・岡山県警のパトカーによるパレードラップが始まるとポツリポツリと雨が落ち始め、またしても”水を差す”レースになる。フォーメーションラップを経て82周の戦いが幕を開けると、23号車がホールショットを奪い、2番手の3号車が背後から攻め立てる。しばらくすると雨量が増え、各車ウェットタイヤへの交換を強いられることに。一方、コースアウトする車両も出始め、FCY(フルコースイエロー)、さらにはセーフティカー(SC)ランと落ち着きのない展開となり、中でも3番手に浮上していた100号車、その後ろにいた#37 Deloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)は、FCY導入のタイミングにピットインしてタイヤ交換をしたため、のちにペナルティが課せられ優勝争いから脱落する。

波乱の序盤を経て、ウェットタイヤでのレースが続くかと思いきや、折返しを前に雨も小康状態となってコースコンディションが回復。スリックタイヤでの出走が可能となる。すると、ルーティンのピット作業に合わせ、ドライバー交代、給油とともに足元にはドライタイヤを装着。レースは次なるステージへと向かうことになる。その中でも23号車のトップ疾走は変わらず。ハイペースで周回を続ける#36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)がこれに続き、3号車は3番手で周回を重ねた。

その直後、48周目には2回目のFCYが導入され、3周ほどで解除されたものの、その直後に違う場所で車両がクラッシュ。また雨が降り始めたことを受け、首位を走る23号車はSCランになると推測し、ピットインを敢行する。一種の”かけ”ではあったが、足元にウェットタイヤを着けてコース復帰を果たした。この時点でライバルたちのほとんどがまだスリックタイヤで周回を続行。するとレースはSCランから赤旗中断に切り替わる。およそ20分後にレースはSC先導で再開され、本降りの雨の中、先にピット作業を行なった23号車は後方からリスタートすることになったが、ピットレーンオープンを待ち構えていたライバルたちは一斉にピットイン。ようやくウェットタイヤに交換、赤旗中断前に暫定トップだった36号車に至っては交換時に痛恨のミスが出て、タイヤが正しく装着されず。結果、ピットアウトするも、コース復帰を前に走行を断念するというハプニングがに見舞われた。

各車が慌ただしくコース復帰を果たすのをよそに、23号車は悠々とトップに返り咲き、3号車が再び2番手に。3位には#8 ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹)が浮上し、レースは終盤へ。しかし、天候は悪化の一途を辿るばかりで、午後3時56分に2回目の赤旗が提示され、午後4時20分に再開したもののSC先導で走り出した車両はわずか5分で3回目の赤旗中断を迎える。この時点で62周を走り終えたことから、この赤旗をもってレース終了となり、23号車の優勝が決定。日産がシーズン初戦をワンツーフィニッシュで飾った。なお、23号車の松田は通算24勝目を達成。自身が持つGT500クラス歴代最多勝記録を更新している。

 

<GT300>
GT300クラスもまた、目まぐるしく変化するコンディション、多発したアクシデントを”活用”したチームが大きく順位を上げた。優勝を果たした#18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻)は、予選18番手からのスタートをものともせず、運だけでなく周りの動きを読むようにクレバーな戦略を活かして、チームに5年ぶりとなる勝利を呼び込んだ。

予選でクラストップタイムをマークしたのは#65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)。2番手に#2 muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)とブリヂストン勢がフロントロウを独占、3番手には#7 Studie BMW M4(荒聖治/ブルーノ・シュペングラー)が続いた。

15周を過ぎると激しい雨に変わり、1台がスピンを喫し、FCYが導入されるが、後にセーフティカー(SC)ランへと切り替わる。このあとピットレーンオープンになると、ウェットタイヤへ交換する車両が続出。瞬く間に大混乱の展開になった。雨脚が強くなる中、安定した速さを見せる車両がポジションを上げ、65号車に続き、#52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)が2番手に浮上。一方で天候が回復。日差しが戻り、ウェットからスリックタイヤが有利な状況になると、ルーティンのピット作業を兼ねて35周目あたりからピットインし、ドライバー交代に合わせてタイヤをスリックへと交換する。

レース折返し時点でのトップは65号車と変わらず。逆に2位以下はコンディションの変化に合わせて大きく順位が入れ替わる。そんな中、46周目にはヘアピンで1台がコースアウトし、その影響でFCYが導入されると、これに合わせたかのように再び雨が落ち始めた。続けてコースアウトする車両が出て、FCYからSCランへと切り替わり、雨も強まる中、さらには近隣に落雷があったことから安全確保のためにレースは赤旗が提示され、一時中断する。20分後にSC先導によるレースが再開、ウェットタイヤに交換する車両がなだれ込むように続々とピットインしたが、ここでポジションが変動。赤旗前にトップに立っていた18号車を先頭に、65号車、そして予選12番手スタートの#244 HACHI-ICHI GR Supra GT(佐藤公哉/三宅淳詞)が3番手まで浮上した。およそ20分間続いたSCランだったが、さらに天候が悪化し、ここで2度目の赤旗が提示される。25分後には再開を果たしたが、SC先導の中、強まる雨にレースは3回目の赤旗となり、そのまま終了という幕引きを迎えた。なお、勝利した18号車の小林はSUPER GT参戦100戦目を優勝で飾ることになり、小出もまたデビューウィン達成という一戦になった。

次戦、第2戦は静岡・富士スピードウェイが舞台。「FUJIMAKI GROUP FUJI GT 450km RACE」は、5月3、4日に開催される。

(文:島村元子 撮影:中村佳史)