スーパーフォーミュラ 第1戦 鈴鹿 レポート&フォトギャラリー

スーパーフォーミュラ 第1戦 鈴鹿 レポート&フォトギャラリー

SF開幕鈴鹿大会、野尻智紀が逆転勝利!

2024年シーズンの開幕を迎える全日本スーパーフォーミュラ選手権第1戦が、3月9、10日、三重・鈴鹿サーキットで行なわれ、予選3位スタートの#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)が、スタート直後にトップを奪取、その流れをキープして初戦を制した。一方、ポールポジションの#38 阪口晴南 (VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)は7位入賞に留まった。

3月上旬にシーズンの初戦を迎えた今年のスーパーフォーミュラ。開幕の舞台が鈴鹿になるのは2019年以来だが、このときは4月に実施。3月に開幕戦が行なわれるのは2007年富士大会以来、鈴鹿での3月開催はなんと2004年まで遡る。

金曜日の搬入日は、日中の気温も高く季節なりの天候だったが、土曜の予選日は冷たく強い風が終始吹き付け、また時折鉛色の雨雲が風に乗ってサーキット上空を占領。不安定なコンディションとなり、午前中のフリー走行では、クルマのセットアップに影響を与えた。その中で、まずトップタイムを刻んだのは、2022年王者の#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)。昨年は体調不良で1戦を欠場するも、ランキング3位となったベテランドライバーが、2年ぶりのタイトル奪還に向け、存在感をアピールした。

ノックアウト予選は午後3時5分にスタート。気温8度、路面温度18度という難しいコンディションでのタイムアタックとなるも、Q1、Q2ともに赤旗が出ることもなく、スムーズにセッションが執り行われた。

全21台のうちQ1・A組には11台が出走、トップタイムを叩き出したのは、#6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。昨年の最終戦で自身初勝利を挙げた勢いをそのままに、手応えある走りを見せた。一方、昨年のFIA-F2チャンピオンで初めて日本でのレースに臨む#19 テオ・プルシェール(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)や、ホンダ系チームからトヨタ系チームへと電撃移籍を果たした#39 大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)はQ1止まりとなった。続くQ1・B組でトップにつけたのは、野尻。これに#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、阪口が続いた。なお、日本人女性初であり最年少デビューとなった#53 Juju(TGM Grand Prix)は、同組の野尻から約5秒落ちという厳しい結果に終わっている。

12台でポールポジションを競うQ2。まず、各セクターで最速タイムを刻み始めたのは、阪口。終盤のセクターで好タイムを刻んでいた太田が、ひと足先に1分35秒880をマークしてトップに立ったが、阪口がこのあと1分35秒789を叩き出し、トップを奪取。自身初のトップフォーミュラにおけるポールポジションを掴み取った。また、その後方でアタックしていた野尻は最速セクタータイムを更新する走りを見せたが、後半セクターでタイムを伸ばせず。結果、3番手に甘んじた。

迎えた決勝日。前日より日差しに恵まれるも気温は低く、冷たい風がサーキットを包み込む。併催の2輪レースが赤旗からの再レースとなり、決勝スタートが予定より20分遅れで号砲。それでも、次第に春めいた日差しに恵まれ、気温12度、路面温度22度のコンディションで31周の戦いが幕を開けた。ポールスタートの阪口が無難にスタートする傍らで、隣の太田は出遅れ6番手へとドロップ。逆に3番手スタートの野尻が抜群のスタートで、阪口を逆転。先制攻撃を決めて真っ先に1コーナーへと飛び込んでいった。

一方、後方では2台がS字で接触。コースアウトしたことを受け、セーフティカーが5周終了までレースをコントロールする。野尻は、仕切り直しとなる中できれいに再スタートを決めると、オープニングラップで2番手にポジションを上げていた#65 佐藤 蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)をあっという間に引き離し、順調に周回を重ねて13周終わりでルーティンのピットインを実施。7.1秒で作業を終えて理想のレースを築いていく。逆に2番手佐藤は15周終わりにピット作業を終えるも、野尻だけでなく、10周目にピットインしていた#3 山下健太(KONDO RACING)、チームメイトの#64 山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)にも先行される厳しい状況に追いやられた。

野尻が”裏のトップ”として着実に周回を重ねるなか、コース上でのバトルを盛り上げたのが太田とそのチームメイト、#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。6周目からのレース再開を機に、シケインで互いが譲らず並走というデッドヒートぶり。2台の白熱のバトルはルーティンのピットインで幕を下ろしたが、力と力が激しくぶつかり合う攻防に、スタンドも大いに盛り上がった。

レースは、26周終了時点でルーキードライバーの#15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)が全車で最後となるピットイン。この時点で正式にトップへと返り咲いた野尻と、2位の山下とのタイム差は4秒強。一方、序盤からオーバーテイクシステム(OTS)を多用していた山下に対し、その背後につける山本はOTSを温存。残り5周を切って2台の差が1秒を切ったが、その山本も4番手の太田からの猛追を受けており、気が抜けない状態。結局、3台は付かず離れずの距離のまま最終ラップを迎え、ポジションを入れ替えることなくそのままチェッカー。トップ野尻の”ひとり旅”を許してしまう結果となった。

タイトル奪還を狙う野尻にとっては、”完勝”の今大会。「最高のスタートを切りました」と納得のいくシーズン幕開けの戦いに満面の笑みだった。また、2位の山下は、昨シーズン開幕イベントの第2戦富士以来となる表彰台獲得。そして、3位に続いた山本は、昨シーズン終盤にSUPER GTで負った怪我からの復帰第一戦での表彰台獲得を果たすこととなった。

なお、ルーキーとして注目を集めていたプルシェールは、レース序盤に痛恨のオーバーラン。フロントウィング交換を強いられたこともあり、ポジションを大きく下げて戦いを終えている。一方の”高校生ドライバーJujuは、しっかりと31周をミスなく完走。ルーキー勢としてのトップは、岩佐の9位。初戦で初入賞を遂げている。

次回第2戦は、九州・オートポリスが舞台。5月18、19日に開催される。

(文:島村元子 撮影:中村佳史)