天候に翻弄されたオートポリス。勝者は坪井翔!
5月17、18日に大分・オートポリスで行なわれた全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦。予選日にあたる17日が天候不良によって全走行セッションがキャンセルとなり、18日に予選と決勝を実施するワンデーレース形式で行なわれた。レースは、予選5位のNo.1 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOMʼS)がスタートダッシュから安定した速さを味方に、優勝を果たしている。
予選日の前夜から雨に見舞われたオートポリス。強風、一向に止まない雨、そして濃霧という悪条件が揃い、予選日は朝から開始時間の調整など、スケジュールの変更が幾度となく行なわれた。午後の予選に代わって公式練習を行なうと決めたものの、気温が上がり、さらに霧が深まって存分な視界も確保できない状態に。結果、全走行セッションがキャンセルされ、翌日に予選、そして決勝を実施することが決まった。
迎えた日曜日は曇天ながら雨の心配はない模様。ようやく全22台がオートポリスでの初走行が叶ったが、気温18度、路面温度20度とややタイヤには厳しい条件となる。通常であれば、Q1、Q2とノックアウト方式での予選が行なわれるが、今回は40分間の計時方式を採用する。結果、序盤に持ち込みセット、タイヤのフィーリングを確認しつつ、セッション中盤には一度タイムアタックを実施。そして終盤に改めてニュータイヤでのアタックに挑むことを想定し、各ドライバーがメニューを進めていた。
セッション折り返しの20分が過ぎ、トップはNo. 8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)。これにNo.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)が1000分の7秒という僅差で続く。その後、チェッカーまで残り15分のタイミングで野尻が1分26秒757をマークし、トップに浮上。これを追うように、No. 3 山下健太(KONDO RACING)が2番手、そして前回のもてぎ大会は、WEC参戦のため欠場していたNo. 7 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)が3番手で続いた。
いよいよセッションが終盤を迎え、各車一旦ピットに戻ってニュータイヤを装着、ラストアタックが近づく。激しいアタックラップ合戦となる一方、依然として日差しに恵まれず、前日から降り続いた雨の影響でコースも存分に乾き切っていないという難しいコンディションのなか、果敢にアタックに臨む各車だったが、あちこちでアクシデントが発生する。これからアタックに向かおうとしていたNo.37 サッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOMʼS)が最終コーナーでスピン。クルマはコースアウト側にストップし、黄旗が提示される。また、野尻も1コーナーでブレーキをロックさせてコースアウト。フロントウィングを失ったが、こちらは自力でコース復帰を果たし、ピットへと帰還した。なお、最終コーナーではフェネストラズのコースアウトによって黃旗が提示されたため、アタック中の車両はその周のタイムが抹消となり、ほぼアタックチャンスを喪失。不本意なポジションで予選を終えるドライバーも多く見られた。
これにより、1分26秒757のタイムでポールポジションを手にしたのは野尻。開幕の鈴鹿大会以来のポールであり、最多記録をさらに伸ばす自身22回目の獲得を果たしている。これに0.046秒差で2番手に続いたのは、山下。そして小林が3番手につける結果となった。
- 予選ポールポジション #16 野尻智紀 [TEAM MUGEN]
- 予選2番手 #3 山下健太 [KONDO RACING]
- 予選3番手 #7 小林可夢偉 [Kids com Team KCMG]
午後に入っても薄曇りのままのオートポリス。気温17度、路面温度20度と低く、タイヤコントロールも難しいなかでの決戦を迎えることとなる。ポールポジションの野尻はクリアスタートを切ったが、3、4番手スタートの小林そしてNo. 8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)がやや出遅れ、逆に5番手にいたNo.1 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOMʼS)はオーバーテイクシステムを活かして抜群の蹴り出しを決めて、あっという間に2番手までジャンプアップしてみせた。さらに予選7番手のNo.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)もこれに続くように3番手へ浮上。逆に山下は4番手から周回を始めた。
今回、レース中のルーティンピットにはピットウィンドウが設けられておらず、いかなるタイミングでもピットインが可能となる。このため、早めのピットインでアンダーカットを狙うのか、あるいは怪しくなってきた雲行きを考慮し、ピットインのタイミングを見計らうのか……。チーム戦略を意識してのレース展開となるなか、2周を終えてから4周目までの間に、2台ずつ計6台がピットイン。だが、その後はしばし”様子見”が続いた。
そんななか、上位争いは野尻がトップをキープし、坪井はおよそ3秒差で追随。これに岩佐が1.5秒差で追っていたが、岩佐は14周目終わりでピットイン。あいにく左リヤタイヤの交換に手間取ってしまったが、コースに復帰するとファステストラップを塗り替え、タイムロスを取り返そうと激走を続けた。
一方、トップ2台は19周終わりでピットイン。作業を終えてコース復帰すると、タイヤが温まった岩佐が2台を先行し、事実上のトップ奪取に成功する。さらに坪井も目前の野尻を逆転し、岩佐を追った。その矢先、No. 4 ザック・オサリバン(KONDO RACING)がコースアウトしてグラベルにストップ。黃旗が提示され、その後、セーフティカーがコースインする。
これを受け、まだピットインを済ませていなかった上位陣の山下、No.64 佐藤 蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)、No.38 阪口晴南 (SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)の3台と、入賞圏内にいるNo.20 高星明誠(ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL)がピットイン。結果的にこのタイミングでコース上の全車がピットインを完了することになった。
24周終了時点でレースはリスタート、トップ岩佐をおよそ1.3秒差で坪井が追い、野尻、山下と続く。この時点でコース上には霧が出ており、視界が徐々に悪くなっていたが、岩佐はペースを落とすことなく、待望の優勝に向けて突き進む。だが、27周目、岩佐が突然のスローダウン! タイヤトラブルが発生した模様で、力なくポジションダウンを強いられ、そののち、クルマを止めてしまった。
代わってトップに立った坪井に対し、野尻も猛追を続けたが、2台の差が徐々に広がり、山下も3位キープに徹することに。結果、このままトップ3はポジションを変えることなくチェッカーを迎えた。一方、4位に続いたのは、佐藤。終盤に牧野との攻防戦を繰り広げた末にポジションを手にしている。なお、その牧野は予選13番手からの厳しいスタートとなったが、確実にポジションアップ。最後は阪口に先行を許して6位で戦いを終えたが、チャンピオンシップでは僚友のNo. 6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)を逆転し、4ポイントリードする形となった。
- 優勝した #1 坪井翔 [VANTELIN TEAM TOMʼS]
- 2位 #16 野尻智紀 [TEAM MUGEN]
- 3位 #3 山下健太 [KONDO RACING]
- 第5戦表彰式
早くもシーズン5戦を終えたスーパーフォーミュラ。これよりおよそ2ヶ月のインターバルを挟み、次は真夏の富士大会を迎える。この間には公式テストも実施されるため、シーズン中盤にはまた異なるレース展開が見られるのか、期待が膨らむ。
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(文:島村元子 撮影:中村佳史)