SUPER GT 第2戦 富士 レポート&フォトギャラリー

SUPER GT 第2戦 富士 レポート&フォトギャラリー

初の3時間レースを制したのは、Niterra MOTUL Z(高星明誠/三宅淳詞)

<GT500>
ゴールデンウィーク中の5月3、4日、静岡・富士スピードウェイにおいてSUPER GT第2戦「FUJI GT 3Hours RACE」が開催された。両日とも新緑まぶしい好天気に恵まれ、合計8万8400人のファンが現地で戦いの行方を見届けている。レースは、#17 Astemo CIVIC TYPE R-GT(塚越広大/太田格之進)が新コンビによる初ポールポジションからスタートするも、予選2位スタートの#3 Niterra MOTUL Z(高星明誠/三宅淳詞)の勢いが勝り、独走でシーズン初優勝を果たしている。

予選日の公式練習でトップタイムをマークしたのは、17号車。3号車、#8 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8(野尻智紀/松下信治)、#23 MOTUL AUTECH Z(千代勝正/ロニー・クインタレッリ)が続き、ニッサンおよびホンダ勢の躍進が目立つ結果となった。

午後2時に予選がスタートし、GT300クラスを経てGT500クラスのQ1が行なわれた。このセッションでトップタイムを刻んだのは、17号車。さらに8号車、さらには#16 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16(大津弘樹/佐藤蓮)が続く結果に。その後のQ2では23号車がトップタイムをマーク、一方の17号車は3番手時計だったが、今シーズンからQ1、Q2の合算タイムによってグリッドを決定するため、17号車がシーズン初のポールポジションを獲得する結果となり、2位に3号車、23号車が総合3位に続いた。なお、開幕戦の岡山ではトヨタ勢がトップ2を独占したが、今回は#14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺)の7番手が最上位となっている。

迎えた決勝。この日も朝から抜けるような青空が広がり、爽やかな初夏を感じさせる好天気となった。午後1時半、気温23度、路面温度41度のコンディションの下、3時間レースが号砲。ポールスタートの17号車と3号車のバトルがすぐさま勃発。アウト側にラインをとった3号車が早速にトップを奪取し、オープニングラップからぐんぐんと後続を引き離す走りを見せる。一方、17号車はついていくのが精一杯。16周目にコースサイドに停止した車両が発生したことを受けてフルコースイエロー(FCY)が導入されたが、それでもなお2台の間には2秒近い差があるほど3号車の速さが際立つ展開だった。

なお、今回のレースでは、ユーズドタイヤでのスタート、さらには3時間レースにおける持ち込み可能な6セットのタイヤを考慮すると、レース中に義務付けられる2回のピットインは、ほぼレース周回数を均等割して実施されるのではないかという予想だった。つまり3時間レースのため、まずスタートから1時間前後でピット作業が始まるのではという読みがあった。そんななか、まず最初に動いたのは16号車。スタートからまだ50分のうちにルーティンの作業を行なうことに。するとこれを機に1台また1台とピットインが始まり、2番手を走る17号車は34周終わりにピットへ。ただドライバー交代はせず、塚越がダブルスティントを担当した。一方、トップをひた走る3号車は40周終わりでピットイン。こちらもスタートドライバーの高星がそのままコース復帰を果たし、セカンドスティントに入った。

GT500クラス全車が1回目のピット作業を終えた時点で、3号車のトップは不動。2位17号車に15秒強の差をつけ独走のまま後半へと突入、折り返しに当たる58周終了時点ではさらに18秒近く差を広げており、まさに”ひとり旅”状態で周回を重ねることになった。そして、レースが残り3分の1、チェッカーまで1時間を迎える少し前に、2回目のルーティンピットが始まる。トップをひた走る3号車は75周終わりでピットイン、47.9秒という早い作業時間でコースへと復帰。ルーキーの三宅にチェッカーを託す形となった。これに対し、17号車は74周終わりでピットインしたが、作業時間が長くなりトップ3号車との差を広げただけでなく、23号車さらには8号車にも先行されて4番手に順位を落としてしまう。

チェッカーまで残り30分を切って、なおも表彰台を巡る攻防戦が激しさを増すなか、17号車は8号車に大接近して逆転を狙うが、惜しくもブレーキング勝負でオーバーラン。ポジションアップには至らない。ところが、残り9分弱の時点で健闘していた8号車が突如としてスローダウン。ミッショントラブルによってまさかのガレージインを強いられて、戦線離脱となった。これを受け、17号車はようやく3位までポジションを上げたものの、逃げるNISMOの2台との差は大きく、”時すでに遅し”。よって、3号車が完勝を果たし、23号車が2位へ。17号車にとっては、悔しい3位になった。また、トヨタ勢トップは4位入賞の#36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)となっている。

 

<GT300>
GT300クラスは、公式練習で#56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(佐々木大樹/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)がトップタイムをマーク、予選に向けても自信を見せていたが、蓋を開けてみれば、Q1、Q2とも安定した速さを見せるチームが台頭。56号車は3番手に甘んじた。結果としてクラスポールポジションを手にした#88 JLOC Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)は、Q2を担当した小暮がユーズドタイヤながら最速タイムをマークする活躍で、小暮、元嶋両選手ともにクラス初のポールポジション獲得となっている。

前回、開幕戦の岡山ではタイヤ無交換で好結果を残した”成功体験”組が今回も3スティントのうち、どこかのピットインで無交換を実施するか否か。戦略的に十分考えられるなかで戦いの幕が上がる。

好調のクラスポール、88号車はレースでも安定した速さを披露。予選2番手スタートのベテランコンビ、#4 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也)がこれに続いたが、ペースアップがはかどらない前方2台を逆転した#2 muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)が3番手に浮上する。さらに、タイヤ無交換が戦略として機能するチームは、ライバルよりもピットインのタイミングを大きくずらしてポジションアップを成功させていった。

そのなかでも88号車の独走は変わらず。2号車が最後に1回目のピットインを終えると再びクラストップに返り咲き、4号車との差は20秒近くにも広がる状態。逆に4号車はポジションアップしてきた#52 Green Brave GR Supra GT(吉田広樹/野中誠太)に先行され、3番手へ後退してしまった。

2回目のピット作業でタイヤ無交換を敢行したのは52号車。これを追う4号車もほぼ同じタイミングでピット作業を済ませ、終盤の戦いに挑む。一方、クラストップの88号車は68周終わりでピットへ。タイヤ交換、給油、ドライバー交代とフルサービスを行ない、小暮がコースに向かった。走行中の全車が2回目のピット作業を終了した時点で、88号車は完全な”ひとり旅”。これに52号車、4号車が続き、さらに粘り強く周回を続けてポジションを戻してきた56号車がチェッカーまで30分を切った時点で4号車を”料理”。この勢いでさらには52号車を猛追する。ともにチャンピオン経験チームによる壮絶な戦いはレース最終盤の大きな見どころとなったが、タイヤ無交換で耐える走りをしていた52号車を56号車が逆転、2位チェッカーを果たした。今シーズン初優勝を果たした88号車はポール・トゥ・ウィンを達成。昨シーズン最終戦もてぎに続く、コンビ2勝目をあげた。

SUPER GT初の時間レースとなった今大会。続く第3戦鈴鹿も同様に3時間レースで開催される。新フォーマットで各チームがどのような戦略を繰り広げるのか。富士でのデータをもとに、また異なる戦略を披露するのか、期待が膨らむ。

(文:島村元子 撮影:中村佳史)