SUPER GT 第7戦 オートポリス レポート&フォトギャラリー

SUPER GT 第7戦 オートポリス レポート&フォトギャラリー

第7戦オートポリス、予選12位スタートのNo.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GTが大逆転勝利!

<GT500>
2025年シーズンの戦いも残り2戦、10月18、19日に大分・オートポリスに開催された第7戦は、シーズン2度目の3時間の長い戦いとなった。雨の心配もされたが薄曇りのままレースが進み、予選12位から戦略を駆使し、怒涛の追い上げを見せたNo.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐)が優勝。チャンピオン経験チームにとって、3年ぶりに味わう美酒となった。

搬入日の金曜日は好天気に恵まれたオートポリスだが、予選日の土曜日は目まぐるしく天気が変わる。午前中の公式練習開始時点では日差しも出て、気温24度、路面温度31度というコンディションだったが、GT500クラスの専有走行開始直前となった時点で雨に変わる。大きく崩れることはなかったものの、午後からの予選に向けて不安要素が残された。

午後2時30分、まずGT300クラスから公式予選がスタート。事前のサポートレースでも雨が降っており、気温、路面温度ともに下降する。ウェット宣言は出ているものの、まだウェットタイヤでの走行は難しい状態で、ドライバーは厳しい条件下でのアタックに挑むことになった。

ワイパーは動いてはいるが雨量は少なく、路面もまだウェットとは言い難いなか、トップタイムをマークしたのはNo.64 Modulo CIVIC TYPE R-GT(伊沢拓也/大草りき)。5台が出場するホンダ勢として唯一Q1突破を果たし、”ちょい濡れ”に強いダンロップタイヤの特性をしっかりと引き出すパフォーマンスを披露した。これにNo. 3 Niterra MOTUL Z(佐々木大樹/三宅淳詞)、No.19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南)が続いている。

続くQ2を前に、無情の雨が降り始める。ピットで待機していた各車の足元はドライタイヤであったが、突如として降り出した本降りの雨に、慌ただしくウェットタイヤが装着される。実のところ、GT300クラスの予選で車両回収や赤旗等が発生し、当初の予定より24分遅れのスタートに。それゆえ、仮にオンタイムでセッションが進んでいれば、ドライタイヤでのアタックも可能となったはずだが、最終的にウェットコンディションでのアタック合戦でトップに躍り出たのは、3号車。シーズン待望の初ポールポジションは、アタッカーの佐々木にとってもおよそ2年ぶりのポールでもあった。2番手にはその僚友No.23 MOTUL AUTECH Z(千代勝正/高星明誠)、3番手にはNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺)という結果となった。なお、ランキング暫定トップのNo.1 au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)は7番手からの追い上げを目指すことになった。

 

翌日の決勝日は朝から濃霧に包まれる。サポートレースの開始が遅れ、また午後からは雨の予報へと変わり、文字通り雲行きが怪しくなる。だが、そんな心配をよそに無事ドライコンディションでスタート進行が始まり、午後1時10分、予定どおりに大分県警の白バイとパトカーの先導によるパレードラップを経て、無事に3時間レースが幕を開ける。スタートから快走を見せるトップの3号車だったが、12周目に7番手争いの2台が接触。1台がコースアウトして5コーナーでストップ。FCY導入からSCへと切り替わり、レースが”振り出し”へと戻ってしまう。SC導入からおよそ10分後にレースが再開すると今度は3位争いが激化。その後も要所要所で激しいポジション争いが繰り広げられた。なかでもハイペースでトップ争いに台頭したのがNo.37 Deloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)。予選6番手からSC明けを境にしてトップ争いを展開、28周目の1コーナーでついに先頭に立った。逆に3号車を攻め立てていた23号車はトラブルに見舞われてピットインを強いられた。

レースは1時間が経過。3分の1を消化する前から1回目のピット作業を済ませるチームもいたが、40周を終えて一番最後にピットへと戻ったのが100号車。徹底した燃費走行で周回数を伸ばしドライバー交代を含む全ての作業を終えてコースに復帰。予選順位を大きく上回る好位置を得てレース中盤に突入した。この時点でトップは37号車。これに100号車、1号車と続きレースはまもなく2時間経過を迎えようとする中、GT300クラスの車両がメインストレート上で突然スローダウン。ピットロード出口先のコースサイドに緊急停止する。

このアクシデントを受け、レースは2度目のFCYが導入されるもわずか2分で解除。この解除明けに次々と各車が2回目のピット作業を開始したが、またしても100号車はタイミングを大幅にずらし、64周終わりでピットにクルマを戻した。このときはドライバー交代をせず、タイヤ交換と給油のみでコースへと復帰。明らかにライバルより短時間で戦いに戻ることに成功した100号車は、ついに69周終了時にコース上のGT500車両のトップに躍り出ることとなる。

その後、レースは僚友同士で丁々発止のバトルを見せていた1号車と37号車にそれぞれマシントラブルが発生。コースアウトや接触など、両車とも落ち着きのない走りが続いたことが影響したか、エアクリーナーが詰まり、水温が上昇。緊急ピットインで対策をしたものの、エンジンへのダメージを考慮して両車ともにリタイアを選択したようだ。1号車は開幕戦以降、ノートラブルのレースで連続入賞を見せていただけに、まさかの展開となってしまった。これにより、トップ100号車は完全に独走態勢で3時間のチェッカーを目指すことになり、これにNo.16 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16(大津弘樹/佐藤蓮)と64号車が激しい2位争いを見せる。ともに今シーズン初の表彰台がかかっており、隙のない走りでのバトルが続いたが、残り2分を切った時点の第1ヘアピンでついに64号車が16号車を逆転! 16号車はすでにタイヤパフォーマンスが限界を迎えており、これ以上の反撃することはできなかった。

レースは3時間を過ぎ、102周を走破した100号車がトップでチェッカー! チームとしては2年越しでCIVICでの勝利を達成している。また2位には64号車、3位に16号車が続き、ともに表彰台を獲得。そしてホンダ勢が表彰台を独占する形で戦いの幕を下ろしている。

 

<GT300>
トップ争いでは、GT500クラス以上に盛り上がりを見せたGT300クラス。その予兆は予選から存在していた。公式練習でのトップタイムはNo. 0 VENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)がマーク。その勢いのまま、予選に突入すると、Q1・A組ではNo. 7 CARGUY Ferrari 296 GT3(ザック・オサリバン/小林利徠斗)がトップ通過を果たし、同B組は0号車が最速タイムをマークした。また、今シーズンをもって参戦終了となるEJ20を搭載するNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)もA組の2番手時計につけるなど、快進撃を見せた。

Q2を迎える頃には雨の降り出すタイミングが気がかりになる。走行中はワイパーが必要である一方、路面はまだウェットタイヤでの走行が難しい状態。滑る路面をコントロールしつつアタックすることが求められた。そのなかで0号車がまずトップタイムをマーク。さらに翌周もタイムを縮めることに成功。これで0号車にとって今季初のポールポジションが決定したと思われたが、チェッカーが降られると同時にNo. 7 CARGUY Ferrari 296 GT3(ザック・オサリバン/小林利徠斗)が0号車のタイムを0.574秒をも上回り、ポールポジションを掴み取ることに成功した。なお、7号車にとっては2戦連続でのポール獲得となる。

 

決勝グリッドにはタイトル争いの渦中にいる車両含め、実力あるチームが顔を揃えた。ランキング5位の7号車を先頭に、ディフェンディングチャンプの0号車、さらに3番手には同6位のNo. 2 HYPER WATER INGING GR86 GT(堤優威/平良響/卜部和久)、そして同トップのNo.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟)とズラリ。3時間という長い戦いでどのようにポジションが推移するのか、注目の戦いとなった。

7号車は速さに物を言わせてレースを先導。0号車はこれについていく形で周回を重ねるが、12周に発生したGT500車両同士の接触でFCYからSC導入となり、7号車が築き上げたギャップは水泡に帰す。仕切り直しのレースとなるなか、28周終わりで7号車がピットインしてドライバー交代、タイヤ交換、給油という”フルサービス”の作業を行なうと、その翌周には0号車が続き、ドライバー交代はせず、給油とリヤタイヤ2本のみ交換。”時短”で逆転に成功した。しかし、スピードで勝る7号車はその差を詰めて、攻防戦へと持ち込もうとした。そんななか、1台の車両がメインストレートでトラブルに見舞われ、ピットロード出口付近にストップ。しばらくしてFCYが導入されるが、その直前に0号車は2度目のルーティンワークを実施。まさに追い風が吹く形でコースに復帰を果たした。これで7号車と15秒ほどの差をつけた0号車は、優勝目指して一直線……のはずだったが、その後、FCY手順違反のペナルティが課され、ドライブスルーすることに。これで再び7号車のもとにトップが渡り、0号車がこれを猛追することになった。

一方、後半になってトップ2台に続いたのはNo.666 seven × seven PORSCHE GT3R(ハリー・キング/近藤翼/藤波清斗)。終盤に7号車と0号車のバトルが再燃するかに思われるなか、今度は7号車と0号車に対し、黄旗追い越しのドライブペナルティが課される。これは、ホームストレート上でFCY導入のきっかけとなった車両が停止したために黄旗が提示されるなか、ピットから出て来た車両を0号車と7号車が抜いたことに対するペナルティだったが、ともにペナルティを消化すると、大量マージンによって7号車はトップを死守できたものの、0号車は666号車に逆転を許し、3番手に後退した。

レースはチェッカーまで残り30分となり、逃げる7号車と追う666号車との差は一時1.5秒を切っていたが、徐々に差が開いて7号車がリード。ところが残り9分を切って7号車がまさかのピットイン。ガソリンが足りず、スプラッシュで給油を済ませてコースに復帰したが、666号車が逆転。逆に7号車は背後に迫る0号車を意識してチェッカーまで走り切ることになった。思わぬ形でトップが転がり込んだ666号車だったが、ミスなく最後まで走りきり、参戦1年目にして念願の初優勝。また、ポルシェ勢としては2012年以来となるクラス優勝でもあった。

なお、チャンピオン争いにおいては、ランキング暫定2位のNo.56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(平手晃平が対象)が同トップのNo.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟)との差を1.5点まで縮める結果に。また、シリーズ後半戦で大きくポイントを加点した7号車も65号車に4.5点差で迫ることになった。もてぎでは、ガチンコ勝負でクラスチャンピオンが決まりそうだ。

SUPER GTはこのあと2週間後に第8戦、最終戦を迎える。両クラスとも僅差でのタイトル争いが繰り広げられるだけに、緊迫したバトルが期待できる。

 

フォトギャラリー

 

(文:島村元子 撮影:中村佳史)