「FUJI GT SPRINT RACE 夏休みスペシャル」
初日は、au TOM’S GR Supraがスプリントレースを制する
<Race1>
今シーズン4戦目の舞台は、静岡・富士スピードウェイ。シリーズ中盤の戦いは、これまでと異なる趣向で繰り広げられることになった。通常、300kmや3時間などといったセミ耐久で展開するSUPER GTだが、今回はスプリントレースでの開催。しかも1レースを戦うのは、ひとりのドライバー。タイヤ交換もなければ給油もせず、スタートしたらひたすらゴールを目指すのみ、というもの。さらに、これに併せ第3戦までの戦績によって搭載されるサクセスウェイトも一旦下ろし、ノーウェイトのガチンコ勝負で行なわれる。まったく新しい形でのレースフォーマットではあるが、シンプルな戦いのため、クルマやドライバーのパフォーマンスがそのまま表れることも事実だ。
まず、初日となる8月2日は、GT300クラスとGT500クラス混走で35周を競うRace1が行なわれた。これに先立ち、午前中には公式練習と各クラスごとの予選を実施。公式練習は通常のシリーズ戦同様にクラス混走と専有走行が行なわれ、各車予選、決勝に向けての準備に着手した。その後、クラスごとの予選を迎えたが、今回は計時方式を採用。通常2クラスに分けて実施するGT300クラスは全車で20分間、そしてGT500クラスは10分間でのアタック合戦となった。
GT300クラスでは、公式練習でトップタイムをマークしていたNo.56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラに代わり、No. 2 HYPER WATER INGING GR86 GTの平良響が速さを見せて自身初のポールポジションを掴み取り、これに、GT300車両のNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORTの山内英輝、さらにはNo. 7 CARGUY Ferrari 296 GT3の小林利徠斗が続いた。
続くGT500クラスでは、今シーズン圧倒的な強さでランキングでも暫定トップにつけるau TOM’S GR Supraの坪井翔が見せるパフォーマンスに注目が集まった。事実、公式練習でトップにつけて、予選を迎える。ただ、サクセスウェイトを搭載しないクルマでのアタックとなれば、俄然気を吐くライバル勢も控える。真夏の厳しい暑さのなか、好走を見せたのが、No.19 WedsSport ADVAN GR Supraの阪口晴南。これに対し、坪井は強い自信を持っていたようだが、アタック中のミスが響いてタイムを伸ばせず。阪口がセパンに続き、最速ラップを叩き出し、ポールポジションを手中に収めた。また、3番手にはNo.38 KeePer CERUMO GR Supraの大湯都史樹が続き、Supra勢がトップ3を独占している。
- GT300予選ポールポジション #2 HYPER WATER INGING GR86 GT 平良響
- GT300予選2番手 #61 SUBARU BRZ R&D SPORT 山内英輝
- GT300予選3番手 #7 CARGUY Ferrari 296 GT3 小林利徠斗
- GT500予選ポールポジション #19 WedsSport ADVAN GR Supra 阪口晴南
- GT500予選番手 #1 au TOM’S GR Supra 坪井翔
- GT500予選3番手 #38 KeePer CERUMO GR Supra 大湯都史樹
午後の決勝を迎えると、ますます厳しい暑さとなった富士。午後3時15分からの戦いは、気温34度、路面温度56度というタフなコンディションの下で幕が上がった。
スタートを決めて逃げる阪口に対し、予選3番手の大湯が坪井に迫るも、トップの阪口に先を塞がれるような形で失速。順位を変えることができなかった。一方、後方では並走する2台が厳しいライン取りをしたことで、その1台であるNo.14 ENEOS X PRIME GR Supraの大嶋和也がスピン、クラッシュ。これを受け、セーフティカーがコースインした。
レース再開は5周終了時点。これを好機に坪井は阪口を攻略してトップを奪取し、周回ごとに後続を引き離していく。一方、速さに勝る大湯も阪口をパス。逆に阪口はペースを伸ばせず、ずるずると後退してしまった。結果、終盤になるとトップ2台はそれぞれが”ひとり旅”状態となり、逆に3位争いは後方から攻防戦を制してポジションを上げてきたNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supraのサッシャ・フェネストラズとNo.37 Deloitte TOM’S GR Supraの笹原右京による一騎打ちへ。フェネストラズが踏ん張って先にチェッカーを受けたが、レース中に他車と接触し、そのペナルティとして5秒加算を課されていたことから、笹原が残る表彰台の一角を手にしている。
GT300クラスは、クラスポールの平良がセーフティカー後のリスタートも決めて、順調にトップで周回をかさねていたが、その背後から、予選4番手のNo.777 D’station Vantage GT3のチャーリー・ファグ、さらにNo. 6 UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARIのロベルト・メリ・ムンタンらがジャンプアップを決めて、上位争いを展開。だが、ムンタンは、SCリスタートでの追い越しに対してペナルティが課され、ポジションダウンを喫した。
ハイペースでの走りを続けるファグがトップ平良を追い上げるなか、薄曇りの空から雨がポツポツと落ち始め、平良がペースダウン。これを好機にファグが鮮やかにトップを奪い、あとは逃げ切りに。さらに、その後方から予選5番手のNo. 4 グッドスマイル 初音ミク AMGの片岡龍也、そして粘り強くポジションを上げてきたNo.65 LEON PYRAMID AMGの蒲生尚弥が平良を逆転。惜しくも平良は表彰台圏内から脱落することとなった。結果、勢いにのったファグが優勝を果たし、これに今シーズン自身初表彰台となった片岡が2位で続き、ランキング暫定トップの蒲生が3位でチェッカーを受けた。
- GT500クラス スタート
- GT500クラス優勝 #1 au TOM’S GR Supra 坪井翔
- GT500クラス2位 #37 Deloitte TOM’S GR Supra 笹原右京
- GT500クラス3位 #38 KeePer CERUMO GR Supra 大湯都史樹
- GT500クラス 表彰式
- GT300クラス スタート
- GT300クラス優勝 #777 D’station Vantage GT3 チャーリー・ファグ
- GT300クラス2位 #4 グッドスマイル 初音ミク AMG 片岡龍也
- GT300クラス3位 #65 LEON PYRAMID AMG 蒲生尚弥
- GT300クラス 表彰式
クラス単独のRace2は、D’station Vantage GT3とENEOS X PRIME GR Supraが勝者に
<Race2>
富士スピードウェイを舞台にしたSUPER GT第4戦。「FUJI GT SPRINT RACE 夏休みスペシャル」と称するスプリントレース2日目は、GT300クラス、GT500クラスがそれぞれ単独での50分レースを行なう。これに先立ち、前日同様、GT300とGT500両クラスによる公式練習からスタートし、次いで各クラスの計時予選が実施された。
朝は前日より強い日差しが差し込み、路面温度が高い数値を示すことに。GT300クラスでは公式練習でRace1の勝者No.777 D’station Vantage GT3がトップタイムをマーク。この日、ステアリングを握った藤井誠暢が好調さをしかとアピールした。予選でもその流れは変わらず。ライバルたちが懸命にタイムを削って迫るが、チェッカーフラッグが振られるなか、藤井が圧倒的な速さで文句なしのポールポジションを獲得。2番手に続いたNo. 4 グッドスマイル 初音ミク AMGの谷口信輝を0.4秒近く引き離した。そして3番手には前日ポールポジションを掴んだNo. 2 HYPER WATER INGING GR86 GTが続き、この日は堤優威が改めて表彰台を狙うことになった。
一方、GT500クラスではRace1でスタート早々にアクシデントによって戦線を離脱したNo.14 ENEOS X PRIME GR Supraが修復を済ませて出走を果たしただけでなく、レースを担当する福住仁嶺が力強い走りを披露する。公式練習時はNo.1 au TOM’S GR Supraの山下健太がトップタイムをマークしたが、計時予選では、福住が山下を0.2秒弱速いタイムでポールポジション獲得に成功した。一方、3番手には、先日GT500クラスでの活動を今シーズンをもって終了することを発表したNo.38 KeePer CERUMO GR Supraの石浦宏明。ファンからの熱い応援を結果にした形となった。
- GT300予選ポールポジション #777 D’station Vantage GT3 藤井誠暢
- GT300予選2番手 #4 グッドスマイル 初音ミク AMG 谷口信輝
- GT300予選3番手 #2 HYPER WATER INGING GR86 GT 堤優威
- GT500予選ポールポジション #14 ENEOS X PRIME GR Supra 福住仁嶺
- GT500予選2番手 #1 au TOM’S GR Supra 山下健太
- GT500予選3番手 #38 KeePer CERUMO GR Supra 石浦宏明
午後になるとやや曇り空先行となり、路面温度は前日のような50度超えは回避。午後2時15分からのGT300クラス単独の50分の時間レースの決勝がスタートする。開始時のコンディションは、気温32度、路面温度42度となり、2周のフォーメーションラップからのレースでは、ポールスタートの藤井に続いて予選3番手の堤が1コーナーで2番手に浮上。一方、谷口は3番手からの追い上げとなる。上位三つ巴の形が崩れてきたのは、折り返しを過ぎてから。谷口のペースが上がらず後続車に追い立てられ、予選8番手から確実にポジションを上げてきたNo.65 LEON PYRAMID AMGの菅波冬悟に逆転を許してしまう。その後も後方車両との攻防戦が続き、谷口はポジションを下げることになった。
トップ藤井は独走を狙うも、背後の堤は懸命に喰らいつく。トップ争いを展開するような僅差の攻防こそなかったが、ひたすらプレッシャーをかけ続けるタフな戦いとなった。しかし安定感ある走りを見せつけた藤井がポール・トゥ・ウィンを達成。前日に続いての連勝となり、ランキングでも暫定2位に浮上した。堤は2位に甘んじたものの、Race1で表彰台を逃したリベンジを果たしている。そして3位は菅波。チームとして連日3位表彰台を獲得したことで、シリーズランキングでは依然としてトップをキープしている。
- GT300クラススタート
- GT300クラス優勝 #777 D’station Vantage GT3 藤井誠暢
- GT300クラス2位 #2 HYPER WATER INGING GR86 GT 堤優威
- GT300クラス3位 #65 LEON PYRAMID AMG 菅波冬悟
- GT300クラス表彰式
午後4時50分、いよいよレースウィーク最後を締めくくるGT500単独の50分レースがスタート。気温29度、路面温度38度とさらに数値が下がるなか、ノーウェイトのガチバトルがどのような展開になるのか注目が集まった。フォーメーションラップを終えてシグナルがグリーンに変わると、真っ先に1コーナーへと飛び込んだのは福住。これに山下、石浦が続く。逃げる福住に対し、山下はなかなか攻略の糸口を見つけることができず後塵を拝する形に。結果、レース折り返しを前にトップ3は等間隔でギャップが広がり、ほぼ単独走行での周回となった。
これに対し、後方では装着するタイヤの違いや異なる車種によるポジション争いが激しくなり、あちこちでバトルを展開。スプリントレースゆえか、タフな攻防戦になりタイムペナルティを課される車両が出るなど、アグレッシブさが目立つ展開になった。
トップ3にほぼ動きが見られないなか、4番手に浮上してきたのがNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supraの関口雄飛。これに予選7番手から果敢な攻めでポジションアップを果たし、5位に続いたのがNo. 12 MARELLI IMPUL Zの平峰一貴。オーバーテイク時の接触などで痛恨の10秒タイムペナルティを課されたが、幸い後続との差が大きく、ポジションダウンを免れている。一方、総体的に厳しい結果に甘んじたのはホンダ勢。予選、決勝と精彩を欠き、Race2での最高位は、No.64 Modulo CIVIC TYPE R-GTの大草りきが掴んだ8番手だった。
- GT500クラススタート
- GT500クラス優勝 #14 ENEOS X PRIME GR Supra 福住仁嶺
- GT500クラス2位 #1 au TOM’S GR Supra 山下健太
- GT500クラス3位 #38 KeePer CERUMO GR Supra 石浦宏明
- GT500クラス表彰式
今回の富士でシーズン前半が終了したSUPER GT。月末の鈴鹿戦からいよいよ後半戦突入となる。再びサクセスウェイトを搭載するだけでなく、GT500クラスは燃料流量リストリクター、そしてGT300クラスは今年から新たに導入されたサクセス給油リストリクターが適用されるチームが増えてくる。新たな勢力争いが見られるか否か、さまざまな”変化”にも注目だ。
フォトギャラリー
(文:島村元子 撮影:中村佳史)