第8戦もてぎ、No.1 au TOM’S GR Supraが勝利し、3連覇達成!
<GT500>
4月に開幕し、年間全8戦で熱戦が繰り広げられた25年SUPER GTもついに最終戦。栃木・モビリティリゾートもてぎが舞台となった決戦は、最後の最後まで緊迫の展開が続き、とても見どころの多い内容となった。そのなかで予選2番手からスタートしたNo.1 au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)がチーム力を活かした戦いを披露し、トップチェッカー。2023年からステアリングを握る坪井がGT500クラス史上初となる3連覇を成し遂げている。
予選日を控えた搬入日は気温こそ低くなかったが、次第に曇り空となって夜遅くから本降りの雨となった。幸い、土曜日は朝から太陽が顔を出し、秋晴れに。ただ路面には雨の影響が残っており、朝の公式練習前にはウェット宣言が出された。ただ、時間の経過とともに路面もドライアップ。各車は予選、決勝のセッティングや持ち込みタイヤの確認作業に注力し、セッション終盤になると予選のアタックシミュレーションに取り掛かった。
午後に入るとさらに気温、路面温度が上昇。気温は22度、路面温度は29度まで上がり、絶好のアタックコンディションに。最終戦とあって、各チームはシーズンベストのアタックにしようと意気込む。なかでもNo.38 KeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹)はベテラン石浦がGT500ラストレースとなることから、まず石浦がQ1を3番手で通過すると、そのバトンを受け継いだ大湯が2位に 0.175秒の差をつけ、第2戦富士以来となるポールポジションを獲得してみせた。38号車はもてぎを前にランキング争いでも4位につけており、最終決戦に向けて一縷の望みを託す結果となった。
予選2番手はランキングトップの1号車。チャンピンが目前となるなか、存分に攻めの走りができなかったと坪井が悔やんだ。そして、同3番手には日産のNo.23 MOTUL AUTECH Z(千代勝正/高星明誠)が続く結果となった。一方、ランキング2番手につけるNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺)はQ1敗退を喫し、タイトル争いに黄信号が灯る。逆に同3番手のNo.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐)は7番手。1号車としては、決して不利ではない条件で戦いを迎えることになった。
- GT500クラス予選ポールポジション #38 KeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹)
- GT500クラス予選2番手 #1 au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)
- GT500クラス予選3番手 #23 MOTUL AUTECH Z(千代勝正/高星明誠)
翌日の決勝日は薄灰色の雲があたり一面に広がる。日差しもすっかり影を潜め、晴れてはいるものの肌寒さを感じる一日になってしまった。
午後1時、気温20度、路面温度22度というコンディション下で最終決戦の300kmレースがスタート。装着したタイヤのコンディションのせいか、38号車は瞬く間に後続車に飲まれてズルズルと後退。1号車が早くもオープニングラップでトップを奪取する。またこれに予選4番手からスタートを決めたNo. 12 MARELLI IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)が2位へと浮上。前を行く1号車を攻め立てた。一方、予選7番手のNo.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐)も序盤に猛プッシュを決めて5番手へ。その前を走るNo.23 MOTUL AUTECH Z(千代勝正/高星明誠)も含め、チャンピオンを狙うチームと今季初優勝を目指すチームが入り乱れての上位争いになる。
レースは早くも3分の1を消化。上位陣で真っ先にピットに飛び込んだのは、12号車。22周終わりにピットインしたが、38号車もこれに続くとピットでの作業時間で12号車を上回り、ひと足先にコース復帰を成功させる。ところがアウトラップで痛恨のコースオフ、その後もミスが重なり徐々に実質5番手までポジションを落とすこととなった。
一方、意表を突くピット戦略を見せたのが100号車。24周を終えてピットに戻り、ドライバー交代、給油と作業するなかでタイヤは交換せず。GT500クラスではほぼ見受けられない無交換戦略を採り、また給油もギリギリ攻めの補給に留めてピットアウト。1号車に対して10秒以上短い時間でコースへと戻ると、作業を終了した車両のトップに躍り出る。ただ、やはりニュータイヤで1号車が追い上げてくると防戦のみとなり、29周には逆転を許した。
全15台がピット作業を終えると、名実ともにトップに戻った1号車は順調に周回を重ねていく。だが、思うようにペースが上がらないのか、後続の追い立てに苦しむように。2位には100号車を抜いた12号車、さらには23号車が怒涛の追い上げを見せており、特に12号車が1号車をピタリとマーク。抜きどころの90度コーナーで幾度となく仕掛けて逆転を試みる。一瞬前に出たシーンもあったが、すぐさま1号車が取り戻すという激しい攻防戦が繰り広げられた。
1号車と12号車のバトルは、その後3番手の23号車までが連なる形で表彰台争いへと変化。だが、抜きどころが限られ、GT300クラスとの混走も続くなかで逆転に持ち込むまでには至らず。このまま1号車が逃げ切ってシーズン3勝目を達成。文句無しでシリーズチャンピオンの座を手にした。これにより、坪井は通算4度目、またGT500クラス史上初の3連覇を達成。また山下も通算3度目、坪井との2連覇による戴冠を果たした。
なお、2位でレースを終えてた12号車は、セパンに続き2度目の表彰台になるはずだったが、レース後の再車検で失格に。これにより、23号車が2位、そして100号車が3位に繰り上がっている。また、14号車がノーポイントに終わったことからシリーズランキングでも2位浮上を初結果となった。
- GT500クラススタート
- GT500クラス優勝 #1 au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)
- GT500クラス2位 #23 MOTUL AUTECH Z(千代勝正/高星明誠)
- GT500クラス3位 #100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐)
- GT500クラス表彰式
<GT300>
最終戦もてぎでは、GT500クラスのベテラン3選手が今季限りでGT500を”卒業”することを事前にアナウンスしていたが、GT300クラスでは、No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)に搭載される「EJ20」がそれに該当した。最後の仕事となったもてぎでは、公式練習でトップタイムを刻むと、午後の予選ではQ1・A組で井口がトップに立ち、Q2ではGT300クラスの最多ポールポジション獲得者である山内が期待どおりに最速ラップをマーク。自身通算16回目のポールポジションを手にし、クラストップから翌日の決勝をスタートした。
また、チャンピオン争いでは、暫定ランキングトップのNo.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟)が14番手スタートに甘んじた一方で、1.5点差で逆転を目指すNo.56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(対象は平手晃平のみ)は4番手と好位置につけた。
- GT300クラス予選ポールポジション #61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)
- GT300クラス予選2番手 #5 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号(塩津佑介/木村偉織)
- GT300クラス予選3番手 #52 Green Brave GR Supra GT(吉田広樹/野中誠太)
レースでもスタート早々から逃げの態勢で果敢な走りを見せる61号車。レース序盤にFCYが導入され、一旦築いた後続とのギャップが縮まったが、後続が激しい2番手争いを展開。その間に再び差が開いた。
しかし、ルーティンのピット作業を機にポジションが動き始める。ライバルより早めにピットインしたNo. 5 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号(塩津佑介/木村偉織)はタイヤ無交換でコースに復帰。56号車もリアタイヤ2本交換で後半戦へ。それぞれがベストレースを目指してアプローチするなか、トップに立ったのは5号車。まずNo.52 Green Brave GR Supra GT(吉田広樹/野中誠太)を仕留めたあとは、巻き返しを図る61号車のプッシュにあったが、5号車は逃げの走りを見せ、逆に61号車はその背後からペースアップするライバルの応戦に忙しくなってしまった。
結果、5号車は逃げ切りトップでチェッカー。チーム創設22年目、参戦車両の86MCは11年目というベテランカーが初優勝を達成することになった。61号車も2位を守りきって、EJ20エンジンのラストレースでシーズンベストタイのリザルトを残した。3位に続いたのは、No.666 seven × seven PORSCHE GT3R(ハリー・キング/藤波清斗)。レース最終盤には、3位チェッカーでチャンピオンが手に入る56号車の怒涛の追い上げに対して激しいテール・トゥ・ノーズを長く展開し、まさに手に汗握るバトルを披露し、そのまま逃げ切りチェカーとなった。
4位チェッカーとなった56号車に対し、65号車は後方からコツコツと追い上げを見せて6位フィニッシュ。全戦獲得ポイントでは56号車が65号車を上回ったものの、参戦台数を限定した海外戦が組み込まれたことで、今シーズンからは7戦による有効ポイントを採用するため、65号車が戴冠することに。チームにとっては7年ぶりの王座で、蒲生は2度目、そして今年再びチームドライバーとなった菅波が初のタイトル獲得を果たしている。
- GT300クラススタート
- GT300クラス優勝 #5 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号(塩津佑介/木村偉織)
- GT300クラス2位 #61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)
- GT300クラス3位 #666 seven × seven PORSCHE GT3R(ハリー・キング/藤波清斗)
- GT300クラス表彰式
フォトギャラリー
(文:島村元子 撮影:中村佳史)































